今日、信号待ちをしていると、目の前をおじいちゃんが自転車で通り過ぎようとしました。
結構急な坂道。ものすごいチャリテクで坂道を下ってきたおじいちゃん。
僕の目の前を通り過ぎる瞬間、そのほんの一瞬僕と目があったおじいちゃんは、どこにそんな握力があるんだ?と思うような急ブレーキをかけ、満面の笑顔で振り向いて
「いつも見てるよ」
と言い残し、また素晴らしいチャリテクで坂道を下っていきました。僕は、「あ、ありがとうございます」というありきたりな言葉しか出せませんでした。ちゃんとおじいちゃんに聞こえたのかな。もっといっぱいお話したかったな。もっといっぱいお礼を言いたかったな。でも、そんな僕の気持ちをよそにおじいちゃんは一瞬で風と一体化していました。
かなりのスピードが出ていた自転車をわざわざ止めて、「いつも見てるよ」の一言を言うために120%の握力を発揮してくれたおじいちゃん。
嬉しかった!!と同時に、改めてそんなみなさんの期待を裏切らないようにこれからも仕事を頑張ろう!と心に誓いながらおじいちゃんの後姿を見つめていました。
すると、ちょうど坂道を降りきったところの横断歩道で
バッキャーーーーン!!!!!
目を覆いたくなるような勢いでコケたおじいちゃん。思わず「え~?!」と叫んで、おじいちゃんのところに自転車でかけつけました。
あんなに素晴らしいチャリンコテクニックを持ったおじいちゃんでもこの坂道は攻略できなかったか……。そりゃそうだよ。明らかにスピード出てたもん、おじいちゃん。
なんて思いながら、坂道を駆け下りました。自転車で。信号待ちしていた車の運転手さん達も出てきて、おじいちゃんに駆け寄っています。
「大丈夫ですか?」
心配しながら覗き込む僕の顔を見たおじいちゃんは、少し恥ずかしそうに
「がんばれよ」
……いやいや。それどころじゃないでしょ!おじいちゃん、自分の心配しなさいよ!
でも最後まで優しい言葉をかけてくれたおじいちゃんは、あのコケ方からは奇跡と言うしかないほど見事に生き残った自転車に乗り、よろよろと去っていきました。
おじいちゃん、かっこよかったたぜ!あんたもがんばれよ~!